第2章 兄と妹とその周辺
半年前―
父―晴幸の仕事が休みで、幸男の部活も休みと重なった日があった。
だいたいどちらかいないのがほとんどなので、四人で食卓を囲むのは久しぶりだった。
晴幸と母―えりが並んで座り、向かいに俺と莉緒が座って食べていた。
すると、おもむろに晴幸が口を開いた。
「そうそう、父さん来週からフランスに転勤するから」
晴幸は何の気なしにさらっと言った。
それを聞いた俺はお茶を吹き出し、莉緒は持っていた茶碗を落としそうになる。
「は!?転勤!?そんなの聞いてねぇぞ!!」
思わず立ち上がり、声を荒らげた。
横では「幸男、汚い」と言って、莉緒が俺の吹いたお茶を拭いている。
「あたりまえだろ。今言ったんだから」
「そういうことじゃなくて、急過ぎるだろ」
どかりと椅子に座り直す。
「いや、こっちも一ヶ月前に言われて、結構急だったんだよ。準備とかに追われちゃってな」
「その時点で言えよ」