第4章 海常バスケ部お泊り会〜夕食準備〜
「それは別にいいの。ただ勝手に教えられたのが気にいらないだけ」
にっこり笑いながらも、シバくことは忘れていない。
「痛い!!いたい!!イタイ!!ギブ!!莉緒ちゃんギブ!!」
森山が冷や汗を流しながら叫ぶ。
その量は尋常ではない。
「あ!!も(り)やま先輩が!!」
「そろそろ腕折れるんじゃねぇの」
「止めてやれよ」
「自業自得だ」
早川が怯えた顔をして声をあげる。
たしかに恐ろしい光景だ。
だが当然の報いである。
「返信はしてないけど、ちゃんと登録はしてあるから」
言い終わったところで、やっと森山を開放した。
相当痛めつけられたようで、やられた腕を何度か摩っている。
まぁ、折られなかっただけマシだろう。
「よかった〜。俺なかなか返信こないから、無視されてるのかと思ったんスよ?」
「ごめんごめん。なんか、練習と仕事のこと考えたらタイミング逃しちゃって」
「そんなの別にいいのに」
ホッと胸を撫で下ろした黄瀬は、今度は不満気に唇を尖らせる。
…お預けくらった犬だな。
犬は好きだが、黄瀬を可愛がることにはならない…はず。
「だって、黄瀬忙しそうだし。疲れてるかな〜と思って」
「いやメールだし、タイミングとか全然気にしなくていいっスよ、ほんと。だから今度からは返信よろしく頼むっス」
「うん、わかった」
「さて、夕飯の準備しよ」と、言った莉緒は大きく伸びをしてキッチンに入った。
「何か手伝おうか?」
ここで“良い人”小堀がすぐに申し出る。
「いいですよ、小堀さん。お客さんなんですから、ゆっくりしててください」
莉緒は笑顔で言う。