第2章 兄と妹とその周辺
「取ってやるから、ちょっと待っとけ」
その姿を見ていた俺は、莉緒に声をかける。
「大丈夫だよ。もうすぐ届くし。それに疲れてるんだから、先にお風呂入って寝ちゃっていいよ。準備できてるから」
とは言っているが、莉緒も大丈夫そうではない。
何故なら手が届いておらず、懸命に腕を伸ばすその姿は、今にも倒れそうだからだ。
「その姿を見る限りだと、大丈夫そうには見えないけどな」
「それ遠回しに小さいって言ってる?」
「そうじゃねーよ」
一瞬よろめいた莉緒の体を後ろから支え、棚に手を伸ばした。
とりあえず、適当にそれっぽいのを掴んでみる。
「これか?」
「そう、それ!」
莉緒に見せると頷いたので、それを渡してやる。
「これから届かないやつは言えよ」
「うん。ありがと」
俺はふと下を見て、#NAME#1は俺が離れる前に顔を上に向けた。
瞬間-、いつぶりかわからないほど久しぶりに、二人の視線が重なる。
ほんの一瞬だったのに、俺にはすごく長くて、時が止まったように感じた。
思っていたより顔も近く、何故だか視線が外せない。
「…風呂入ってくる」
無理やり視線を外した俺は、逃げるようにキッチンを後にした。
その顔は熱く、耳まで赤くなっているのがわかる。
これはただの照れか、はたまた極度の女子苦手からの恥ずかしさか、それとも-----。