第2章 兄と妹とその周辺
「それは別にいいけど…。何で私の連絡先出回ってんの?森山さん来たらシバいていい?」
「それは構わない。むしろ大賛成だ」
あわよくば、莉緒に止めを刺されてしまえばいい。
「それにしても、幸男も真面目だね〜。嫌なら適当に私に聞いたフリして、断ってくればいいのに」
小さく笑いながら莉緒が言う。
それは無理な話だ。
だいたい、俺が参加を決めた理由は莉緒のためでもある。
「でもいいんじゃない?たまには息抜きとして、みんなで遊んで騒げば?」
「まぁ、ここんとこ練習ばっかで、OFFもまともになかったからな」
「そうそう。私も久しぶりにみんなに作るから、ちょっと頑張らないとね」
莉緒は俺に笑いかけ、「ごちそうさま」と言って立ち上がる。
俺も後を追うように立ち上がった。
水道の下に溜めていた水に、どんどん食器を浸けていく。
「あ、先に乾いた食器片付けないと」
朝から乾かしっぱなしだった食器を、てきぱき食器棚にしまっていく。
全ての食器をしまい終えると、今度は流し台の上にある棚を開けた。
そして一番上の段に手を伸ばす。
「何取ろうとしてんだ?」
「新しい布巾。前に買い置きしたやつがここにあるの」