第2章 兄と妹とその周辺
side 幸男
「幸男ー!いい加減起きろ!!」
声が聞こえたと同時に、左頬に痛みを感じ、慌てて飛び起きる。
「いって!!おまえな、もう少し起こし方っていうのを考えろ!!」
起こされた少年-笠松 幸男は、ベッドの前に立つ起こした張本人を睨みつける。
そこにいるのは、母―ではなく、妹の莉緒だ。
「しょうがないじゃん。下からいくら呼んでも降りてこないし、肩揺すっても起きなかったんだから」
不満なのか、眉をひそめる。
朝食の作り途中だったらしく、制服の上からエプロンをしている。
「昨日が練習試合だったからって、いくらなんでも寝過ぎ。早くしないと朝練遅刻するよ?」
莉緒は大きくため息をついた。
「もう朝ご飯できるから、着替えて早く降りてきてね」
それだけ言うと、さっさと部屋を出て下に降りていった。
俺はまだ疲れの抜けない体を無理やり動かし、ベッドからのそのそと出た。
普段の練習試合ならこうはならないが、昨日の相手校は”やっかいな後輩”の”やっかいな元チームメイト”で、かなり苦戦し負けた試合だった。