第2章 兄と妹とその周辺
「仕方ない…。この手は使いたくなかったが…」
「は…?」
森山は妙にもったいぶった言い方をする。
はたして次は何を言いだすのか。
「黄瀬」
「な、何スか?」
真剣な顔で黄瀬に近付き、森山は携帯電話を開いて液晶画面を見せた。
「参加したあかつきには、おまえにこれをやろう」
「これって…!?」
「そう、莉緒ちゃんの連絡先だ」
「な…!?森山!!おまえ、なに勝手に人の連絡先流そうとしてんだ!!」
俺は抗議するが、森山は聞く耳を持たず、そのまま黄瀬に揺さぶりをかける。
「どうだ、黄瀬。参加するか?」
「参加…するっス!!仕事キャンセルしてでも!!」
「おまえさっきと言ってること違うぞ!!」
最後の希望も森山によって打ち砕かれた。
まさかここで莉緒の連絡先を悪用されるとは思っていなかった。
やはり、森山に教えるのは間違いだったらしい。
「あとは笠松か…」
「俺は絶対に参加しないぞ」
四人より一足先に着替え終わり、小堀に戸締りを頼んでさっさと帰ろうとすると、森山に引き止められた。
「まぁ、待て笠松。ちょっとこっちに来てくれ」
肩を捕まれ、強制連行される。