第2章 兄と妹とその周辺
「そうっスよ。そういえば、莉緒っち何年せ…」
聞きかけたところで、突然左頬に痛みがはしった。
「私さ、2年生で年上なんだよね。常識的にさ、年上に「っち」をつけるってどう思う?」
「いや、だって最初2年生なんて言って…」
「どう思うかって聞いてんの」
そんな理不尽な…。
莉緒は、さっき二人を切った時の顔になっている。
笠松先輩に目で助けを求めるが、「俺にも無理だ」と言わんばかりに、首を横に振られた。
「えっと…よくないです」
「だよね。年上を呼ぶ時は「っち」じゃなくて、何をつけるんだっけ?」
「「さん」っス…」
「よろしい」
莉緒から左頬を解放される。
解放された左頬はジンジンと痛かった。
「も〜、莉緒さんまでモデルの顔に傷付ける気っスか?」
「関係ない。例え黄瀬が女の子に騒がれる「モデルの黄瀬 涼太」だとしても、私は「普通の黄瀬 涼太」として接するから」
びっくりした。
この人たち兄妹は、揃って変わったことを言う。
こんな女の子は初めてだ。
「新鮮っスね〜。俺ハマるかもしれないっス」
ぼそりと呟いたところを、笠松先輩に「どうかしたか?」と聞かれたが、「何でもないっス」と誤魔化した。