第2章 別れとはじまり
あれから一週間経った。
うちにあった臣の上着とか私物を返しに行こうと思ったけど、一人で行く気になれなかった。
合鍵ももっていたから返したかった。
「仕方ない…。」
意を決して連絡をしてみた。
「…。はい。」
枯らした声の臣が電話に出た。
「…大丈夫?具合悪いの…?」
「ちょっと…。ごほっごほっ。なに…?」
「薬のんだ?…例の彼女にきてもらいなよ。」
「彼女じゃねーし。で、なに?」
「あ、そうだ。鍵とか荷物返したくて。」
「ああ。そっか…。」
「風邪治ったらまた返しにいくね。」
「…。あっそ、わかった。」そういって電話を切られた。
彼は基本的に人に弱さを見せない。でも相当辛そうだった。
やっぱり心配だった私は、もう21時を過ぎていたが、薬をもって臣のうちへ向かった。
鍵をあけるとソウルが飛びついてきた。
「久しぶりだね~ソウル~あ、お散歩行く?」
「…。わり…。行けてない。散歩。」
「いいよ。私行くから。取り合えず、これ食べて薬ちゃんと飲んで?」
「おう…。」
近くの公園に出かけた。
「ふー。あれ…。臣。何してんの…寝てなよ!」
「いや。時間。」
「え??ああ、大丈夫だよ…。まだ22時前だし。」
「何かあったら後味わりーし。ごほっごほ!」
「ほら。ここ座ってて。」
「おう…。ふーーー。」相当しんどいのか、臣はベンチに横になった。私は横に腰かけた。
「珍しいね…。風邪ひくなんて。」
「ああ。ちょっとな。」
「あんまり無理しないでね。」
「なあ…、名無し…」
「♪~」
私のスマホが鳴った。がんちゃんからだ。
「なに。でねーの?」
「うん。。。あとでかけなおす。」
「そ…。」
臣の家へ戻り、溜まっていた洗い物などをやる。
「いつから具合悪かったの?」
「一昨日の撮影後から寒気が半端なかった。」
「インフルエンザではなかったんだね。でも、風邪もこじらせると大変だからしっかり静養してね。おじや作っておくから。」
いつの間にか、寝息をたてて臣は寝ていた。
「もう23時か…どうしようかな…。」
臣の事も心配だったし始発で帰る事にした。