第1章 浮気の予感
少ししてすぐにチワワが出てきた茂みから男性が出てきた。
「やべ…。すみません!俺の犬が…」
マスクをしているその長身の男性。
みるからにあやしい…。でもチワワはその男性を見るなりワンワン吠えてすぐにとびついた。
「ソウルー。なんだよ珍しいなあ。。人に飛びつくなんて。あ。。。。服とか汚しませんでした?こいつさっき水たまりに足つけてたから…」
「え…?」コートの下から見えているドレスの裾にしっかりとかわいい足跡がついていた。
「あの、クリーニング代払うんで!」
「いやいや!いいですいいです!うちにもワンコがいて慣れっこなので」私は丁重に断ったが、その男性はなかなか引きがらない。
「じゃあ、送らせて。俺の車すぐそこなんで。」
今考えるとなんて馬鹿な事したんだろう。
だって、いくらチワワ連れだとしてもマスク姿で身長も高い男性。しかも車なんて…。犬はただの罠で変なところへ連れ込まれてもおかしくない。
でも、この時の私は不思議とチワワをあやす彼を見て悪い人には見えなかった。
普通では考えられないけど、私は彼の車に乗った。
そのソウルというチワワは私の膝の上に乗ると体を丸めて寝息をたてはじめた。
「ぷ…。おまえ相当気に入ったんだね…って、すみません。」
「いいえ。かわいいし、このままで大丈夫。」そっと頭を撫でる。
「あの、家どこですか?」
「あ…。○○交差点を曲がってもらえるとすぐです。」
「あーあの辺か。了解。」そういうとエンジンを付けた。自動で音楽が流れる。洋楽のR&Bだ。私が好きな曲調だった。
その曲を口ずさみながら運転をする彼をそっと横目でみた。
マスクをしているけど、どこかで見たことがあった。
「あの。三代目のボーカルに登坂君に似てるって言われた事ありません?目のあたりが」本当に自然と口にしていた。
「あーー。てか、やっぱり気づいてなかったか。」
マスクを取った彼の顔を見て私は口を押えた。
「うそ!!本人?????」一気に胸がバクバクと高鳴った。
「この事秘密にしといてください。」
「も、もちろん…。」
「結婚式とかの帰り?」
「え?ああ、そう。友人の式が自由が丘であって…」
「だから、そのドレスなんだ。クリーニングだせば落ちるかな…。本当ごめんなさい。」
「大丈夫。安物ですし!」