第9章 一番
3学期の始業式の日、部活がないから山本くんと一緒に帰る。
「さやかちゃん、この後暇? 家寄ってかない?」
「いいよ。あーでも今日あんまり勉強道具持ってない」
即OKしたもののカバンの軽さを思い出す。
「あぁ…。うーん、えっと。家に遊びに来ない?」
彼が言い直す。
「うん! 行く!」
私はニッコリ笑って返事する。
……
彼の部屋に入るとすぐ、彼に優しく抱き寄せられる。
私は彼の顔をちょっと見上げる。
彼の唇が優しく私の唇に触れる。
彼が唇をそっと離して微笑む。
「今年初キス…。こないだデートしたとき、キスも出来なかったから…」
「うん…」
私は頷いて、彼にギュッと抱きつく。
彼は優しく私の髪を撫でてくれる。
気持ちいい…幸せ。
……
その後ベッドに腰掛けて、冬休みのこととか練習試合のこととかいろいろ話す。
お正月のこととか冬休みに読んだマンガの話とか。
バスケの話とか勉強の話とか。いろいろ。
山本くんと一緒にいると、いっぱい話したいことが出てくる。
「あ、そろそろ帰ろうかな」
私は時計を見て言う。
「帰っちゃうの? じゃあ最後にもう一回チューしていい?」
彼がちょっと甘えた声で言う。
「いいよ」
そう言って、私は彼の唇にチュッとキスする。
「ふふ…もっと…」
彼がそう言って、私の唇のすき間に舌を入れる。
私は、あーんって口を開けて、彼の舌を迎える。
彼の舌の熱くて柔らかい感触が、私をうっとりさせる。
彼の唇がそっと離される。
名残惜しい私は、彼の顔をじっと見つめる。
「好きだよ。さやかちゃん」
そう言って、彼は優しく微笑む。
私はすごく嬉しいのに涙が出そうになっちゃう。
でもニッコリ微笑む。なるべく可愛く。
「わたしも好き。大好き」