第9章 一番
次の日。
山本くんと電車に乗って初詣に行く。
山本くんのお願い事は…やっぱり成績のことかな?
私も…ちゃんと2年に進級出来ますように。
そして…山本くんとずっと仲良く出来ますように。
お参りの後におみくじを引く。
「吉だ…。あれ? 山本くんも? なんか普通だね」
「吉って大吉の次にいいんだよ。知ってた? さやかちゃん」
「え? そうなの? わたし中吉とかのほうが上だと思ってた」
「ふふ…俺も。でも正月のテレビでやってたよ」
「そうなんだ。じゃあ私たち結構いいね」
私は嬉しくなって彼の顔を見る。
「うん」
彼も嬉しそうに微笑む。
……
帰りにファストフード店に寄る。
「俺…冬休み一生懸命勉強しててさ…俺これでいいのかなって…考えたりした」
山本くんがポツポツ話し出す。
「…何が?」
私はちょっと微笑んで話を聞く。
「田舎の高校の…一番も二番も…別にそんなたいしたことじゃないのに…そんな小さいことにこだわってさ。
そんなことより、さやかちゃんとデートしたりする方が大事なんじゃないかなって」
そこまで言って、彼はちょっと笑う。私もちょっと笑う。
彼が前の方を見て続ける。
「でも俺…やっぱり一番になりたいんだ。なんでかな? それはやっぱり…俺が男だから?」
私はとっさにうつむく。
彼が私の様子を見て言う。
「…あの、笑かすつもりで言ったんじゃないけど…別にウケるんならウケていいよ…」
「いや…あのっ…うん…。カッコいいよ…」
私は笑いを噛みしめて返事する。
「いや、それもう…全然笑ってるし…」
「あははっ…情熱大陸のテーマ聴こえるかと思った」
「もう完全バカにされてるし…」