第1章 シンプル
次の日の放課後。
学校の図書室で山本くんと一緒に宿題をした。
まあ、私はほとんど写させてもらったみたいなものだけど…。
山本くんは丁寧に教えてくれた。
昨日、私がわからなかった数学の問題のことも。
わからないかもしれないけど、とりあえずやってればわかるようになるよって言ってくれた。
まあ、山本くんは頭いいからそうかもしれないけど…。
でも宿題も出来たし、勉強したっていう満足感がある。
「なんか頭使ったから脳が疲れた気がする!」
帰る準備をしながら私が言うと、山本くんが笑いながら言う。
「じゃあ自販機コーナーでジュースでも飲んで帰ろうか。脳には甘いものがいいよ」
「そうなんだ! さすが山本くんいろいろ知ってるね」
私は思ったことを言う。
「いや、そんなこともないと思うけど…」
山本くんは照れくさそうにはにかんだ。
私はそういう顔が結構可愛いとか思ってしまう。
…
勉強教えてもらったからジュースおごるよって私は言ったんだけど、山本くんはそんなのいいよって自分でジュースを買った。
少し言いにくそうに山本くんが切り出す。
「須藤さん、バスケ部じゃなかったっけ? やめたの?」
知ってたんだ…。私は正直に話す。
「…うん。やめさせられた。赤点ついたから」
「そっか。赤点つかないくらいにはなりたいね」
「うん…」
しょんぼりした私を励ましてくれるような声で彼が言う。いい人だなぁ。
「大丈夫だよ。これからも一緒に勉強しよう」
彼がニッコリ微笑む。
「いいの? わたしなんか山本くんとレベル違いすぎでしょ?」
励ましてくれるのは嬉しいけど、勉強の邪魔になったら悪いかな。
「ううん。人に教えるって自分の頭にも入るし、繰り返しやるのが勉強だから」
全然問題なさそうに彼は言った。
やっぱり勉強出来る人の言うことは違うなぁ。