第1章 シンプル
「須藤さん、数学が苦手なの?」
駅までの帰り道、山本くんが私に尋ねる。
「数学っていうか…勉強が苦手…なのかも…。
中学の時はそこそこ出来たつもりなんだけど、高校入って全然ついていけてない。
頑張って勉強してココ受かったけど…わたしには高望みだったのかもね」
話してるとつい涙がにじんできそうになる。
声が震えないようにぐっとガマンする。
そんな私の様子を知ってか知らずか山本くんは優しく微笑む。
「そっか。もしよかったら勉強一緒にしようか? 俺、多分勉強得意だから…」
「…得意っていうか、学年一番だよね? 山本くん」
「知ってた? ふふ」
ちょっと嬉しそうに山本くんが笑う。
山本くんをなんとなく少し身近に感じた。
「山本くんがいいなら…一緒に勉強したいな、わたし」
私がそう返事すると山本くんはすごく嬉しそうな笑顔になった。
「本当? じゃあ明日の放課後は? 学校の図書室でとりあえず宿題でも一緒にやろうよ」
「うん!」
明日の予定が出来て私は楽しくなった。