第1章 シンプル
山本くんのおかげでもちろん全問正解。
私は今日の補習から解放された。
山本くん、もしかしてまだ生徒会室にいるかな。
私はちょっと様子を見に行ってみることにした。
生徒会室の前で扉を開けるかどうか迷っていると…。
ガラッ
カバンを持った山本くんが扉を開けて出てきた。
「…須藤さん」
山本くんがつぶやく。
「ちょうど良かった。お礼言いたくて。さっきはありがとう」
私がそう言うと、山本くんはちょっと照れくさそうに笑う。そして冗談めかして言う。
「さっきお礼言ってたよ」
「うん。でも改めて言いたくて。ありがとう」
「じゃあ…どういたしまして」
はにかんだ様子で山本くんが答える。
ちょっと可愛い、とか私は思う。
「山本くん、今帰り? わたし、電車なんだけど駅方向なら一緒に帰らない?」
私は思い切って誘ってみた。
「え? いいの?」
「? 山本くんがよければ」
「須藤さんみたいなリア充が俺と歩いてくれるの?」
山本くんが首を傾げて言う。
…リア充に見えるの? 確かに一学期は何も考えてなくて、そんな感じだったかもだけど…。
「リア充…じゃないと思うし、そんなこと全然気にしなくていいと思うよ?」
私がそう言うと、山本くんは嬉しそうに笑った。
「ありがとう…。じゃあ帰ろうか。俺は歩きだけど、家は駅の反対側だから駅まで一緒に帰ろう」
「ありがとう!」
私も嬉しくなって返事した。