第3章 帰ろっか
「山本くん、もしかして元気ない? ジュース飲んでく? それともドーナツ屋さんでも行く?」
図書室を出て山本くんに聞いてみる。
「あ…元気なさそうに見える? ごめんね…。うん、ジュース飲もうか」
山本くんは笑顔で返事する。
やっぱり少し元気なさそうではあるけど。
学校の自販機コーナーでジュースを買ってその辺に座る。
運動部はまだ校庭で活動してるから、なんとなく眺める。
山本くんがボソッとつぶやく。
「バスケしたら脚太くなるかなぁ…筋肉とか…」
「……」
そこ気にしてたの? 相変わらずキモイ…。
「大丈夫だと思うよ? 中学の時のが練習きつかったし。
ココの女子バスは緩いから目に見えるほどの筋肉はつかないと思う。
それより最近運動不足だから脂肪つく方が心配だと思うよ〜」
私は笑って話す。山本くんもちょっと笑って頷く。
「そっか……。
うん、でもホントは…
さやかちゃんが本物のリア充に戻ったら、俺捨てられるんじゃないかなって…」
「えっ…」
私は彼が座ってる目の前に回り込んでしゃがむ。
「なんで…? そんなことないよ…。わたし山本くんのことすごく好きだよ」
「…ありがとう。でも今でも休み時間とか俺と話すより女子と話す方が楽しいんだろ?」
「……」
そういうふうに見えるのかな…。ていうかそうなのかな…。わたし…どうなんだろ…。
「ごめん。比べる方が変だよな。俺…さやかちゃんが弱ってるときねらって付き合った自覚があるから…」
「そんなこと…」
確かに落ち込んでるとき優しくしてくれたから急激に好きになったのかもしれないけど…。
それだけじゃないよ…。
ここが学校じゃなかったら山本くんのことぎゅーって抱きしめたい。
「それだけじゃないよ。
そうかもしれないけど…それだけじゃないよ。
わたし何言ってるかわからないかもしれないけど…
山本くんのこと好きだよ。本当に」
私は彼の顔を見上げて真剣に話す。
彼は私の顔を見て微笑む。
「うん…。そっか。ありがとう」
彼が答える。私はうんうんって頷く。