第3章 帰ろっか
「あの…パンツ見えたラッキーって思ったんだけど…それ短パンかなんか履いてんの?」
彼の言葉に私はバッと立ち上がる。
「ど…どこ見てんの? まあスパッツ履いてるけどね」
私の真剣な告白をそんなとこ見ながら聞いてたの?
「なんでそんなん履くの…」
彼が非難めいた声で言う。
何その言い草。ムカつく。
「駅の階段とか登るとき、パンツ見えたら困るし、痴漢とかにもあいにくくなる気がするし」
私は説明する。
「えっ? さやかちゃん、電車で痴漢とかあうの?」
彼が驚いて聞く。私は答える。
「あ、ううん。まだあったことないけど…」
「そっか、よかった…。もしあったら言ってね。俺、さやかちゃん家の駅まで毎朝迎えに行って、一緒に電車乗るから」
「うん。ありがとう」
そんなふうに言ってくれて私は嬉しくなる。
「帰ろっか」
「うん」
私はそっと彼の手を繋ぐ。
「友達に見られるかもよ?」
彼がちょっと恥ずかしそうに私に言う。
「いいよ」
私は彼の顔を見てニッコリ笑う。
「そっか」
彼もニッコリと笑った。ちょっと恥ずかしそうに。
私、山本くんのそういう顔が好きなんだ。
私と彼は手を繫いで駅まで一緒に帰った。