第16章 どう思う?
パン屋さんに寄り道した。
「久しぶりだね。2人で寄り道するの」
「うん」
ベンチに並んで座って、コロッケサンドを食べる。
「去年、図書室で勉強教えてもらってたときね…。
わたし、祐樹と寄り道するのが楽しみで学校来てたよ」
「ふふっ…俺も」
2人でちょっと顔を見合わせて笑う。
「あの時、祐樹が助けてくれたおかげで、わたし今も学校に来れてる」
「ん…? 補習で答え教えたこと?
そんなことないよ。ちゃんと補習に出てたんだから、俺が教えなくても先生が教えてくれたよ」
そう言って、彼は笑う。ちょっと間をあけて続ける。
「俺…好きな子にちょっといいとこ見せたかっただけ。
答えだけ教えてもしょうがないと思ったけど…泣いてるのも見ちゃったし」
「え…泣いてるとこ見られてたんだ…」
私はちょっと恥ずかしくなる。
「見たよ。その時はすごいビックリしたけど…付き合い始めてから納得した。
さやかちゃん、よく泣くから」
そう言って、彼は少し悪戯っぽく微笑む。
そうなのかな…わたし。
「勉強教えてくれたのも嬉しかったけど…友達になってくれたのがすごく嬉しかったの。
こんなふうに寄り道したり、本貸してくれたり」
私がそう言うと、彼は照れくさそうにちょっと目をそらす。
「そういうふうに言われると…なんか罪悪感感じるなぁ。
俺は…得意分野で恩を売って仲良くなる作戦だったから」
「えへへ。好きだよ」
私は彼の横顔を見て言う。
「どうしたの、急に」
彼が笑う。
「言いたくなったの」
私は答える。
「そっか」
彼は嬉しそうに微笑んで応える。
あれからまだ1年ぐらいしか経ってないんだね。
私はこの1年、なんだか長かった気がする。
祐樹はどうなのかな。
来年の今頃は受験生だけど、やっぱりときどきこんなふうにおしゃべりしたいなぁ。