第5章 フクロウと主様と名前。
今、目の前のネコは何と言った?
(・・・私の、血?)
コイツは吸血鬼か何かなんだろうか。
思わず、サッと距離をとる。
『!?何で離れるの!?』
「・・・血はあげないよ」
『何で!?』
「やだよ」
『ほんの一滴でいいんだよ!?それだけでキミは――』
「・・・・・・・」
『あ、いや、その』
「何?―――私が、何?」
それからの私の追求は10分ほど続いた。
『・・・だから、ほんの一滴でいいんだって。それが僕への見返りなんだから、安いもんでしょ』
「嫌、減る。さっきから言ってるじゃん。大体、何で私なの?他の人に頼めばいいじゃん」
必死なネコに、何回も血を持っていかれるのは堪ったもんじゃない、と中々首を縦に振らない少女。
フクロウは、寝かけていた。
「・・・はあ・・・――いっ!?」
丁度、溜め息をついたとき私の人差し指に鋭い痛みが走った。
「ちょっ・・・」
『隙あり!』
どうやら、このネコは私の人差し指にその牙を立て、血を舐めたらしい。
顔をしかめる私と正反対に、ネコはしてやったりと満足そうだ。
『これで、キミは僕の力を共有できるようになったよ。だから、僕がキミに触れてなくてもキミは自分で傷を修復できる』
「・・・・」
『あ、ちなみに僕は今からキミのパートナーだ。というわけで、宜しくね』
勝手に話を進めていくネコだが、何がなんだかよく理解してない。
あるのは、人差し指の痛みだけだ。
「ねえ、指。痛いんだけど」
『あっ!?ごめんね!』
「え、あ、うん」
そんなに謝られるとは思ってなかった。