第51章 番外編スリー
生意気なことを言ってしまったせいで、百パーセント嫌われたに違いない。
そうなる前にサインやら写真やら済ませておいて良かった。
もうどうせ画面の中でしか会えないんだし、別にいいや。
「おかえ・・・どうしたの!?誰かに何かされた!?」
「ただいま、ハル姉・・・いや、スイレンさん、」
「スイレン?オッケー、分かった。ぶん殴っとくから大丈夫よ、マリ。ハル姉がちゃんと仕返ししとくからね」
「・・・ハル姉」
「うん?」
「・・・今、幸せ?」
“キミから奪ってでも、ハルが欲しい”
(・・・よくもまあ、こんな小娘相手にそんなことを)
そんなに欲しいなら、連れ去ればいい。
犯罪行為だとかどうとかは別にして、マリ相手にそんな真剣な目をすることはないのだ。
「うん、幸せだよ」
「・・・そう」
「でも私、マリが嫌ならスイレンのところには行かない」
「・・・え?」
「私がスイレンのところに行くって言ってから、全然喋ってくれてないじゃん?・・・私、妹に嫌われてまで他の人のところには行こうとは思ってないからさ、思ってることがあるなら言ってほしいな」
そう言ったハルは、控えめな笑みを浮かべてマリを見ていた。
マリはそのまま何回かまばたきをしたあと、目を伏せた。
「・・・私、本当は嫌なの」
「うん」
「本当はハル姉に行ってほしくない。ずっとここにいてほしい。・・・でも、ここはそんなに裕福じゃないし、あの人のところに行った方がハル姉は幸せになれるってことも分かってる」
「うん」
「分かってるんだけど、でも・・・やっぱり寂しいの。いつまでもハル姉に甘えてばっかりじゃダメだし、いい加減独り立ちしなきゃいけないって思ってるんだけど」
「・・・うん」
「でも・・・いいんだよ。私のことは放っておいて、ハル姉はあの人のところに行けばいい。たまに帰ってきてくれたら、それでいいの。だから行って?ハル姉はハル姉が幸せになるために、ちゃんと選ばなくちゃいけない」
そう言い切るとハルは呆気にとられた様子だったが、やがて小さく笑った。