第50章 番外編2
それから何日か経ったある日、イタチから電話が掛かってきた。
電話番号は鬼鮫から教えてもらったそうで、急遽会うことになった。
何か話でもあるのかと思いながら待ち合わせ場所に行くと、スーツ姿のイタチが既に立っていた。
「・・・ごめん、待った?」
「いや、オレも今来たところだ。じゃあ行こうか」
「行くってどこに?」
「軽く甘いものでも食べないか?」
聞けば、今日は午前中まで仕事だったらしい。
やはり話があるということで近くの喫茶店に入ると、店の中にいた女性客の視線を感じた。
(相変わらずモテるな・・・)
そんなことを思いながら、口を開く。
「で、話って?」
「ああ。・・・この前会えて、それからずっと考えてたんだ」
「・・・何を?」
彼が私を見る。
目を合わせるのにこんなに緊張したことは初めてで、結局は私はイタチの肩を見ていた。
「オレともう一度家族にならないか」
「・・・えっ?」
沈黙が落ちる。
(・・・それって)
きっと彼なりに考えて言ったのだろう。
彼は優しいし、過去の罪を償おうと思ったのだろうか。
過去の罪というのはきっと、私を置いていったこと。
(そんなこと、どうでもいいのに)
私は結論が出ないまま、ゆっくりと顔を上げた。
「ふふ、イタチ兄さんたらプロポーズなんて。私たち付き合ってもないのに」
「・・・ハル」
「冗談だよ」
「・・・もちろん、無理強いをするつもりはないし、今のお前の生活を壊してまでとも思ってない」
「・・・後悔してるの?私を置いて死んだこと」
「・・・」
「違うでしょ。イタチ兄さんはああなることを望んでた。そのためにはしょうがなかったの。・・・私も分かってるから、今更イタチ兄さんのことどうこう言うつもりはないよ」
「・・・だが」
「お金もかかるしね。イタチ兄さんとはこうしてたまに会えるだけで私は十分」
そう言っても微妙な表情のイタチに、意を決して口を開く。
「イタチ兄さんのエゴに私を付き合わせないで」
「・・・」
「なーんてね。そこまで思ってないけど、でもイタチ兄さんに負担をかけるようなことはしたくないの」
これが本心。
前世では散々迷惑かけたので、今度はというのが本当のところ。
さて、納得してくれるだろうか?