第50章 番外編2
そして、時刻も遅くなった頃、そろそろ帰ろうかと時計を見たところで誰かに引っ張られた。
「おいおい、お前何してんだよ」
「・・・デイダラ・・・お酒くさいから離してもらっていいかな」
「んだよ、釣れねえな、うん・・・まあオイラもちょうど酒が飲める年になったばっかだけどさ・・・」
「デイダラだけみんなより若いよね。何で?」
「何でって言われても・・・」
久しぶりに会ったデイダラは、髪も肩につくかつかないかくらいの長さで、相変わらず芸術について熱く語るのだった。
しかし、あまり酒が強くないようで、喋っている間にも船をこぎ始めていたのでそのまま放置していると十分後には眠りについていた。
(ああ、幸せだなあ)
まるで夢のようだ。
ここが私の望んだ世界かもしれない。
みんなが幸せに暮らせる、争いもない世界。
(・・・ああ、良かったなあ)
時刻はもう十時半を過ぎていた。
あまり遅くなると心配をかけるので、そろそろ帰ると伝えると、鬼鮫が送ってくれることになった。
「遅くまで付き合わせてすみません。みんな、あなたが来て浮かれちゃって・・・いつもよりも酒の量が多いですし、きっとあのまま寝落ちですね」
「ああ、そうなんですね。みんなは羨ましいなあ、いっしょにお酒が飲めて。私はまだ未成年ですし、お酒も美味しいとは思えないので」
「将来はぜひ、あなたと酒を飲みたいものです。私から見たあなたはいつでも子どもなので、大人になった姿が想像できませんけど」
鬼鮫も機嫌がいいのか、いつもより饒舌だ。
今日は疲れたけど、それ以上に嬉しくて楽しかった。
「鬼鮫さん、今日はありがとう。みんなに会えてよかった」
「それはこちらのセリフです。あなたが会うという決断をしたおかげですので」
そんなことを言って、鬼鮫が車をとめる。
「さ、着きました。遅くなってすみませんね。ではまた」
車を降りると会釈をして、中に入る。
私が中に入ったのを見届けると、車は発進した。
「・・・あ、ハル姉。おかえりなさい」
「ただいま。マリ、まだ起きてたの?」
「うん、まあ。ハル姉が帰ってきてから寝ようと思って」
部屋に戻ると、マリが起きていた。
私の姿を見ると本当にあっさり電気を消して布団に潜った。