第50章 番外編2
「その、何ていうか・・・実は、みんなにはもう会ってて・・・今日は鬼鮫さんに誘われてここに来たの」
「・・・アイツが・・・?」
「先に言っとくけど、別に恨んだりなんかしてないからね?誰もそんなこと一言も言ってないでしょうに」
「・・・だが、オレは」
「もういいの。全部終わったことだから」
そう言うと、彼は私から手を放す。
まるで何かから解放されたかのように脱力し、そのまま床に座り込んでしまった。
「そうか・・・そうか」
かつての兄はそう繰り返し、俯いて肩を震わせた。
私は靴も脱がないまま、しゃがんで彼の手に触れる。
「もう、泣かないでよ」
「・・・ごめんな、オレ・・・」
「いいってば」
「・・・ああ・・・」
「イタチ兄さんったら、泣き虫になっちゃったのね。ふふ、随分と変わっちゃって」
すると、ガチャリと扉を開けて鬼鮫が顔を出す。
「感動の再会ができて何よりです。おや、イタチさんが泣いている?・・・これはこれは、珍しいものを見れました」
「鬼鮫さん、私を置いてさっさと行くのやめてもらっていいですか?心の準備がまだだって言ってるのに、私の話を無視して」
「すみませんね、私はせっかちなものでして。でもまあ、結果オーライで良かったんじゃないですか?」
「そうですけど・・・」
何だかんだあって、私がやっと居間に入ると、そこには全員がいた。
もちろん小南もいて、彼女に謝ると涙目になりながら「いいのよ」と言ってくれた。
「ごめんね。・・・みんなに会えば、ダメになると思ったの。でも、みんなのこと嫌いになったわけじゃないから・・・それは分かってほしい」
「大丈夫だって、ハル。もうみんな分かってるから」
「・・・スイレン」
「ね?ほら、今日はね、ドーナツ買ってきたんだ。一緒に食べよう」
ニコニコとスイレンが笑みを浮かべる。
ネネが手招きして私を隣に招いたことで、再び和気藹々とした会がスタートした。