第50章 番外編2
かつての兄には、会おうと思っている。
鬼鮫たちが帰った十秒後にはそんな結論を出していたのだが、果たしてそれが本当に正解なのかと考えていた。
私はどうも、何かにつけ昔のことを思い出す癖があるらしい。
そういうのはよろしくないとは理解しているが、どうしても思い入れが強いのかやってしまう。
先ほどの夢は、寝る前に昔のことを考えてしまったからだろう。
結局、次の日には鬼鮫に電話で会いたいという旨を伝えたのだが、心情的にはあまり明るくはなかった。
暇さえあれば、どういう顔をしたらいいか、とか、開口一番は何を言おう、とか、そんなどうでもいいことに頭を悩ませる日々が続いた。
何せ、鬼鮫に電話した時に言われたのが、これだ。
“分かりました。じゃあ来週の金曜はいかがです?その日はちょうど私たちの集まりがあるので、みんな揃うんです”
“あ、そうそう。私たちが連れて行く際にあなたが出した大声ですが、どうも『小学生の出した鬼ごっこの声』ということになったそうですよ。ふふ、ハルさんの声は小学生と捉えられたんですねえ”
(ムカつく・・・)
さらっと子供っぽいとバカにしてくるところがまた腹が立つが、そこは置いておく。
そんなこんなで考えていても結局決まらず、ついにその日が訪れた。
「遅くなってしまいすみません。どうぞ、乗ってください」
そう言って鬼鮫が助手席の扉を開ける。
「あ、あの・・・子ども相手にそんなことしなくても」
「いいじゃないですか、あなたは立派な女性です。やらせてくださいよ」
「中学生を女性と呼べるんですか、鬼鮫さん」
「あ。今、ロリコンって思ったでしょ」
「まあ」
「そこは否定してくださいよ。・・・まあ、遠慮しないのは何よりですが」
すっかり昔のように話せるようになった私たちだが、私としては着実に前に進んでいるような気がする。
こうして笑い合えることだけで幸せを感じる。
あとどのくらいの間、こうやって笑えるのかなんて考えなくていい。