第50章 番外編2
「えっ、昔公園で会った!?何それ、聞いてない!」
「言い出しにくかったの。マリはスイレンの大ファンでしょ?だから、何ていうか・・・私だけ会って仲良くなったって言ったら、その・・・申し訳ないっていうか?」
「そんなこと思わないから!言ってくれたら良かったのに・・・まあ確かに、ハル姉ってあんまりスイレンのこと興味ないって感じだったもんね。どちらかと言うと、アイドルの方が好きだったし」
「えっ、何それ!?僕がいながらひどくない!?」
「ややこしくなるから黙っててくれる?」
何とか誤魔化して、帰りたくないと駄々をこね始めたスイレンは鬼鮫に強引に車に押し込められていた。
鬼鮫は最後まで紳士に振る舞っていて、スイレンに恨めしげな目で見られても、どこ吹く風というような感じだった。
「では、また今度」
そう残した鬼鮫に、今度は隣にいたマリが反応する。
「え!?何で?ハル姉、またあの人と会う約束でもしてんの?」
「・・・いや、まあ、うん。ちょっとね」
「ちょっとって何?ハル姉はそうやって、いつも私に隠し事ばっかりするんだから!」
「ごめんって、お姉ちゃん謝るから」
「お姉ちゃんって言えば許されると思ってんの?」
「いつも許してくれるじゃん」
「いや、別に怒ってないけどさあ・・・」
「マリって本当に私のこと好きだよね」
言ったそばから許してくれている。
マリはスイレンと似ていると思う。
過保護なところとか、その他諸々。
結局、何とか誤魔化せて、ため息をつきながら布団に入る。
一日でいろいろなことがあり過ぎて疲れてしまったが、まだ私には考えなければならないことがある。
それは、あのマンションで言われた鬼鮫の言葉だった。
“イタチさんに会ってあげてください”
いつかは考えなければならない問題だった。
彼らがいるのだから、あの人もいるに決まっている。
“とはいえ、すぐにとは言いません。あなたにも思うところはあるでしょうし、もちろん断ってくださっても構いません。ですから、答えを決めてください。また、あの家へ伺いますから”
“・・・”
“あの人はずっと、あなたを待ってるんですよ”
ハア、とため息をこぼして目を閉じると、その気はなかったのに、いつの間にか夢の中へ入っていた。