第50章 番外編2
「着いたぞ」とサソリが言って、みんなが車から降りる。
私は拘束されているので身動きが取れず、結局鬼鮫が横抱きにして移動することになった。
「落ち着きましたか?」
「・・・はい」
「無理やり連れてきてすみません。・・・とはいえ、今更もう遅いですがね」
昔、波の国の一件のあと、再不斬と白を逃がす前に体調を崩し、私を探しに来た鬼鮫に抱かれて帰ったことがあった。
それを今になって思い出す。
(懐かしいな)
「懐かしいですね」
「・・・」
「いえ、すみません。独り言です」
(・・・びっくりした)
自覚のないうちに声が出たのかと一瞬焦ったが、どうやら違ったようだ。
それにしても、一体どこへ連れて行くつもりなのだろう。
(マンションみたいだけど・・・ていうか、私のパンツ見えてない?今さら言うのもなんだけど・・・)
すると、ある一室の前で足を止めて、鍵を開けると中に入る。
一人暮らしには広すぎる部屋で、大方この中に誰かの家だろうというのは分かったが、一体誰のだろうという疑問ばかり浮かんでくる。
そうこうしていると、鬼鮫が私をソファに下ろし、拘束を解いた。
それぞれが適当にくつろいでいるのを見ていると、目の前にお茶が出された。
正面のソファにはサソリが座っている。
タバコに火をつけようとして、少し考えてやめたのを眺めていると、バチッと目が合う。
「・・・ねえ」
「あ?」
「私がここから逃げ出したらどうするつもりなの」
「・・・」
「随分と暢気ね」
私がそう言っても、彼は反応しなかった。
「覚えてないって言ってるのに、どこまでも自分勝手なのね。・・・一番最初に死んだくせに」
「・・・!」
「嘘だよ、ちゃんと覚えてる。・・・飛段さんがさっき車の中で言ったことが、何だか泣けちゃうくらい嬉しくてね。ああ、言わなきゃなって思わされちゃって」
サソリが目を丸くして私を見る。
その視線から逃れるように目を伏せると、私の言葉が聞こえた他の三人がサソリと同じような表情で周りに来た。