第50章 番外編2
「ハハッ、その目・・・初めて見たわ。そんな顔もできるんだな。・・・うん、お前のせいだよ。お前がオレらをこんな風にしたんだろ」
「・・・はあ?」
「オレさあ、前に死んだとき、最期に思い浮かんだのお前の顔なんだよね。で、そん時初めて気が付いた。オレにもまだ、こんな感情残ってたんだなって」
「・・・」
「うん、分かんねえよな。お前記憶ないんだもん、意味分かんねえ話してごめんな。・・・でもさ、やっぱり一回はお前と話してみたくて」
飛段が、笑う。
(この人、こんな笑い方してたっけ・・・?)
自分の息遣いがやけに大きく聞こえた。
(・・・あ、やば・・・)
彼の方から視線を逸らし、下を向く。
涙がこぼれそうになるのを必死に耐えながら、右手の親指で左手の親指の爪を何度も撫でた。
“アンタ、怖いんか”
そりゃあ怖いに決まってる。
“そろそろ向き合おう?”
向き合えば正解は見えてくるのか。
(・・・でも)
彼らにここまで言わせておいて、私が今、隠す意味はあるのだろうか。
そうすることが彼らと私にとっての幸せだと、私が勝手に決めていいのだろうか。
言ってしまえば、今まで突き通してきた私の気持ちが壊れてしまう。
葛藤の合間に涙がこぼれて、気持ちは簡単に傾いた。
「・・・なんで」
「ん?」
「・・・バカなんじゃない・・・?」
拭っても拭っても涙はこぼれるばかりで、喋ることができない。
私以外の車に乗っている人全員がギョッとした顔をして、途端に焦り始めていた。
「ちょっと飛段、あなた何をしたんです?」
「は!?オレのせいかよ!?」
「うるせえ!運転に集中できねえだろうが!」
ギャーギャー騒ぎ始めた彼らに、懐かしさを覚える。
無言で眺めていると、車はどこか大きな建物の中に入って行った。