第50章 番外編2
「あなたもこの前からしつこいな・・・」
分かりやすい嫌悪の表情を浮かべたところで、こうなった以上どうすることもできないと思い、静かにする。
すると、無言になった私を見て、隣に座っていたオールバックの男が私の顔をのぞきこんだ。
「大丈夫か?」
「・・・何が」
「いや、急に静かになったから・・・あ、分かった。角都の運び方がダメだったんだろ。おい角都ゥ、あんな米俵みてぇな運び方するから、ハルの具合が悪くなっちまっただろ?」
「オレはごく普通に運んだだけだ。逆に聞くが、暴れる人間を怪我させずに運ぶにはどうしたらいいんだ?あれが最適だったはずだ」
「だからー・・・」
確かに、私を担いで歩いた角都の肩が腹にめりこんで痛かったのは事実だ。
だが、問題はそこじゃない。
明らかにこれは、拉致だ。
犯罪だということが分かっていないのだろうか?
同意の上でついて行ったわけじゃないことは彼らも分かっているはずなのに。
「もしもし?スイレン、もういいぞ」
唐突にそんな声が聞こえる。
ふと前を見ると、涼しい顔で運転をしている赤髪の男。
(この人、サソリか・・・?)
と、そこで気づく。
「・・・まさか」
「ん?どうした?」
「“スイレン”は、あなたたちの仲間なんですか・・・?」
「ああ、そうだな」
何でもないようにサソリが答える。
(まさか、スイレンは罠?・・・私は、誘導されたってこと?)
そうなると、記憶がない思っているはずの彼らはどうして私がスイレンの方に行かないと思ったのか。
その答えは、すぐに分かった。
「二手に分かれて待ち伏せしてたんだよね。まあ、俺ら以外って言っても、スイレンだけだけど。あんな有名人に手ェ掴まれたら、そう簡単には振り払わねえだろうし?・・・お前は昔から人だかりとか苦手だったし、今回もそうかなって」
「・・・ていうか、何でこんなこと・・・私が何かしましたか」
「何もしてねえよ、お前は。ただ、オレらが勝手にしてるだけ」
「・・・こんなことして、ただで済むと思ってるんですか」
「思ってねえよ。せっかく今まで悪させずに生きてきたっつーのに、お前のせいで台無しだよ」
「・・・私のせい?・・・ふざけないで」
感情を奥底に押し込んで、思いきり飛段を睨み付ける。