第50章 番外編2
小さくなるネネの背中を見送ると、少し乱暴に頭を掻く。
(やってしまった・・・)
ネネは間違ったことを言っていない。
それなのに勝手に八つ当たりして、私はなんて最低な人間なんだろう。
自己嫌悪に陥りながら、帰路につく。
(逃げてばっかり、かあ・・・)
要は、向き合うことが大事だとネネは言いたかったのか。
でも、向き合ったところで何になる?
私は会わないことが最良の決断だと思ってそうしているのに、それじゃあダメなのか。
・・・私は私なりに考えていたつもりだけど、客観的に見れば、ただ逃げていただけということになるらしい。
(それについて反論する気はないけど・・・でも、向き合うことがいい方向に繋がるのか?)
確かに、向き合ってみなければ何も始まらない。
けれども今の私にとって、それはとても勇気のいることであり、一人で結論を出すには時間がかかりそうだった。
(時間は・・・あんまり無さそうだな。何事もなければいいけど)
彼らが、記憶のない私をどう捉えるかは分からない。
でも、私は私なりに結論を出すべきなのだろう。
ネネの言葉を頭の中で思い浮かべながら、私はしばらくの間、正しい答えを模索していた。
───そんなある日。
「ねえ、聞いた!?校門のところに“スイレン”が来てるって!」
「えっ、ホント!?やばっ、サイン貰いに行こうよ!」
学校での授業が終わり、帰ろうと荷物を持ったところでそんな会話が聞こえてきた。
(・・・え?)
「・・・マジで・・・?」
周りの女子が黄色い悲鳴を上げて、校門の方へと走っていく。
それを見ながら、窓からその方をのぞくと、見事に人だかりができていた。
その中心には、あのスイレン。
隠しきれないオーラを振りまきながら、群がる生徒の相手をしている。
(・・・何でここに・・・?)
マリは大喜びだろうなあ、と他人事のように思う。
もしかしたらネネが教えたのかもしれない。
正直、家さえ分かれば学校の特定なんて簡単なことだ。