第50章 番外編2
「───てことがあったんだよ、ネネ。どういうこと?言ってないよね?」
「・・・小南姐さんと鬼鮫さんがなあ・・・ウチはハルのこと一言も言ってないわけやし、やっぱり偶然なんじゃあ・・・」
「そんな偶然ある?・・・だとしたら、そろそろ雲行きが怪しくなってきたって感じかな」
ハアとため息をつき、手のひらでこめかみをさする。
(困るな・・・どうしよう、鬼鮫が来たってことは、もうみんな分かってるだろうし・・・)
私の家はあの施設しかない。
それがバレているということは、私の居場所を特定したも同然だ。
(あの時の鬼鮫は、私に記憶があるか確かめていたような感じだったし・・・私の考えすぎなら、それがいいんだけど)
正直、自惚れているのかもしれない。
再会したとき号泣したネネを基準にしているからそうなのか、もしくは私がそうであってほしいと願っているからなのか。
だとしたら都合のいい妄想だし、笑いすら出てくる。
「ハルさあ、偶然なら偶然で受け入れたらどうや?」
「・・・は?」
「いやだって、偶然ならもう運命やん。避けられんものやし、ウチかて出会ったのは運命やと思っとるよ」
「・・・受け入れられるわけないじゃん・・・・もしかしたら私、またみんなのこと殺すかもしれないんだよ?」
「それはないって」
「・・・なんでそんな風に言えるの?根拠もないくせに」
ついきつい口調になってしまって、すぐに謝る。
一方のネネはというと、微笑を浮かべただけだった。
「アンタ、怖いんか」
「・・・」
「前みたいに、墓しか作ってやれん自分が嫌なんやろ」
「・・・やめて」
「でも、アンタが自分で選んだ道や。それがどういうものであれ、アンタは自分の責任を持たんといけん。・・・そろそろ向き合ってみよう?怖いからっていつまでも逃げてばっかりじゃあ、アンタは過去から───」
「ネネ」
静かな、威圧を含んだ声を向けた。
「・・・もう黙って」
私がため息をつくと、ネネがハッとしたように口をつぐんだ。
「ごめん」と小さな謝罪が耳に届いたが、特に反応することなく目を閉じる。
(・・・そんなこと言われなくたって)
結局気まずくなって、別れるのは時間の問題だった。