第50章 番外編2
「お前は相変わらず後先考えないな。捕まっては元も子もないだろう」
「はいはい、うるせーな。お前はオレの母ちゃんかよ!」
「オレは男だ」
「相変わらず頭固いな、お前も・・・普通に冗談だろーが」
「・・・オレはどちらかと言うと、飛段に賛成派だ。あくまで方向性の話だがな」
彼───角都もまた、イタチや鬼鮫と同じ会社に勤めている。
というか、部署は違えど基本的に“暁”は同じ会社に勤めている。
そうすることで情報伝達がしやすかったりするのが利点なのだが、勿論逆なこともある。
性格の不一致でバトルを繰り広げることもしばしばあるが、基本的にそういった衝突は一日で終わらせ、長引かせないというのが彼らの中での決まりだ。
長引かせることで、彼らの根っこにある殺人衝動なるものが疼きだし、イライラして実力行使しようとするからだ。
ちなみに、一度だけ角都とサソリがそうなったことがあるが、体格のいい鬼鮫が抑えつけたことで終わった。
この世界では忍術は使えないので、体術が物を言う。
未だに根に持っているのは角都の方で、週に三日、ジムで体を鍛えていることはここだけの話だ。
「オレにいい考えがあるんだけど。・・・スイレン、お前が協力してくんなきゃダメだわ」
「は?やだよ、僕はいいって言ってるじゃん。ハルが今幸せならそれでいいんだって。隣にいるのが僕じゃなくても・・・そのマリって子は、ハルのこと大切に思ってるみたいだし」
「お前、それ本気で言ってんのか?」
「・・・だから、そう言ってるじゃん」
「・・・まあ、考えとけよ。返事はいつでもいいからさ」
スイレンが黙って、俯いた。
「僕だって」と小さな声で呟くが、テレビの音に消されて誰の耳にも届かなかった。
「なあ、イタチには言ったのか?」
「言ってません。・・・一体、どう言えっていうんですか」
「まあ、こればっかりは仕方ないよなあ・・・アイツが一番何も言わねえけど、分かりやすく待ってるもん」
満場一致の意見で、イタチには言わないこととなった。
彼の心中を察することは容易で、それくらいの配慮はしてやろうということだ。
結局、その場はお開きになったが、スイレンの答え次第で彼らの動きが決まるということは、スイレンの頭をしばらく悩ませる種となった。