第49章 番外編いち
もし、あの時彼女の手を取っていたなら、私には違う未来が待っていたのだろうか。
私たちが彼女を守ろうとしていたように、彼女も私を守ろうとしてくれた。
それだけで十分だった。
たとえば、彼女が私が死ぬことを全てわかっていたのだとしても、私は何度だってあの子を守りたい。
それがたとえ、私の命の上でも生きてほしいと望んだ。
抱いていた気持ちも、過ごした思い出も、あの子の笑顔も。
全てが私の宝物だったから。
きれいじゃなくても、ボロボロでも、それでも構わない。
たとえ心が死んでいても、いつかまた生まれ変われる日が来る。
ガラでもなく、そう信じた。
後悔はしていない。
だから、何度だってそうするのに。
───あれから一週間が経った。
何の音沙汰もなく、きっと彼女はもうここには来ない。
マリも最初は気にしてはいたようだが、日を重ねるにつれ、関心は薄れていくようだった。
それに対し、私は昔の夢をよく見るようになっていた。
(泣きはしないけど、精神的に疲れるな・・・もう終わったことなのに)
あれで良かった。
あれが正解なんだ。
私だってあの頃に未練がないわけじゃないし、許されるならもう一度、なんて思ったことがないわけじゃない。
ただ、私だって悩みに悩んだ末の結論なのだ。
そう簡単に撤回するわけにもいかない。
(ネネと小南ちゃんに会っちゃったな・・・小南ちゃんが他の人に言わなきゃいいんだけど・・・)
私が覚えていないと理解した時の彼女の顔が忘れられない。
振り払ったときの私の気持ちは如何なるものだったか、一体誰に想像がつくだろうか。
とはいえ、あまり引きずっているわけにもいかない。
そろそろ割り切らなければ、と思った矢先だった。
───あの男がやって来たのは。