第49章 番外編いち
言いそうになって、やめた。
愚問だった。
きっと言葉の先は、「大事に思っているか」あたりだろう―――まあ、私が自惚れてなければの話だが。
幸い、個室だったため、ネネの泣き声は聞こえても視線は感じられなかった。
(変わらないな。・・・ネネも、きっとみんなも)
私のことを無条件に好きでいてくれる。
一体、私がいつ何をしたのだろう。
ネネの話し方からすると、みんなは私に会いたがっているということになる。
一方の私はと言うと、先程述べた通り、答えはノーだ。
泣かせたのは私だというのに、ネネにハンカチを渡し、背中をさすりながら頭の片隅で考える。
(何を思ってそんなに会いたがるんだろう。大体、私に会ってどうするつもりなんだ?・・・私は会いたくないんだけどなあ)
みんなが変わっていないというならば、余計に。
何よりも私を優先するかつての兄や、最期までいっしょにいた相棒、私を生かすために死んだ彼女、その他諸々。
彼らの人生は彼らのものであり、私のために何かする必要はない。
そうしていると、ネネがぐしゃぐしゃな顔で私を見た。
「なあ、そんなこと言わんといてやぁ・・・せっかく会えたのに、もう会わんなんて冷たいこと・・・ウチ耐え切れへんわぁ!」
「分かった、分かったから。ネネ、お願いだから泣き止んでくれないかなあ・・・」
「分かったって、何が分かったんや・・・うう・・・」
「会うよ、これからも。でもネネだけよ?他の人には言わないでね」
そんなこんなで何とか泣き止んでくれたネネだったが、化粧はとれてしまい、再び目は充血してしまっていた。
元々薄化粧ではあったのであまり変わりはしないし、本人も別に気にしている様子はなかった。
「これからも会うよ」と言っただけで、ネネは大層嬉しそうな笑みを浮かべる。
私が言うのも何だが、少し単純すぎるのではないかと思う。
きっと、彼氏に尽くすタイプなのだろう。
そうして次に会う約束をして別れた後、思わずため息をついた。