第49章 番外編いち
「・・・さっきはごめん。ウチ、その・・・アンタに迷惑かけたかったわけやなくて」
「いいよ。私もびっくりしただけで、そんなこと思ってないから」
走ってきた女性―――ネネが、小さく頭を下げる。
彼女はすっかり大人になっていて、小柄で可愛らしい女性になっていた。
先程は必死すぎて可愛らしいお顔が残念なことになっていたが、泣き止んで落ち着けば、私の手を掴んで近くの喫茶店に入って行った。
お金を持っていないという私に対して、大丈夫と言うネネに年の差を感じる。
充血した目のまま私を見る彼女に、思わず目を逸らしたくなった。
「・・・ウチな、今マネージャーしとるんよ。ほら、主様がモデルやっとるやろ?あれのマネージャー」
「へえ・・・すごいね。忙しいんじゃない?」
「うん、まあ。今日はたまたま休みでここら辺に来て、そしたら横顔が似とる人がおって・・・ずっと見ようたら歩き方とかも同じやし。髪短いから最初はよう分からへんかったけど、やっぱり合っとった」
「・・・よく分かったね」
「なあ、アンタ覚えとるなら何で主様に会いに来うへんの?」
「え?」
「主様だけやない・・・アンタのお兄さんだって、小南姐さんだって、みんなアンタに会いたがってんねん」
そう言うと、ネネは眉を下げて私を見た。
「・・・ごめん、ネネ。私と会ったことは、無かったことにしてくれるかな」
「・・・え・・・?」
「私はもう昔の人たちとは会わない。悪いけど、アンタも例外じゃないよ」
「・・・」
「いつまでも昔のことを引きずっているわけにもいかないでしょ。みんなを否定するわけじゃないけど、私は私の人生を生きる。今を邪魔してほしくないの」
きっぱりとそう言い放つと、ネネは呆然として私を見ていた。
見るに耐えきれなくなって、つい下を向く。
ごめんね、と心の中で呟きながら、時間が経過するのを待った。
しばらくしても、何の返答もないので顔を上げると、そこには号泣しているネネがいた。
「えっ・・・ネネ?ごめん、一応ここ外だから、あんまりそういうの・・・」
「何でそんなこと言うんっ?う、ウチらのこと、もう嫌いになったん?」
「え、いや、」
「違うんなら、そんなこと言うのやめてや・・・ウチが、どんだけアンタのこと・・・」
(私のこと、何?)