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うちはに転生しました。

第49章 番外編いち









―――ふいに目を覚まし、夢を思い出して月を見ると、ボロボロと涙が溢れてくる。

何も悲しいことなんてないはずなのに、連鎖反応のように涙はこぼれて、一人静かに嗚咽を噛み殺す。

結局、いつの間にか泣き疲れて朝を迎えるというのが、満月の日の夜のパターンだ。

記憶は、物心つく頃には戻っていた。

前世を思い出しては懐かしみ、幸せだったけれど、それ以上に戻りたくはない過去。


何の因果か、私は三度目の生を受けた。


ここまで来たら笑ってしまいそうになるけれど、正直どうして生きているのかもわからない。

六道仙人は「魂が消滅する」と言っていたはずなのに。

いくら考えても私に分かるわけもなく、気が付けば生きる意味を考える日々だ。

私には両親はいない。

ゆえに孤児院に引き取られ、今では一番の年長者として他の子たちをまとめ、頼られる存在になっていた。

こういうのはガラじゃないのだが、慕われるのは嬉しいことだ。

今の年齢は十四。

前世と前前世では永遠の十四歳として終わった私だが、今生ではとりあえず二十歳まで生きるのが目標だ。


「ハル姉、見てみて!ほら、“スイレン”だよ!」

「あー・・・マリは本当にこの人が好きだねえ」

「カッコいいし、優しそうだし。ハル姉はカッコいいと思わないの?」

「え?いや、そりゃあ思うけど・・・タイプじゃない」

「そんなこと言ったって、ハル姉だってマリが友達から借りた雑誌とかちゃっかり見てるじゃん」

「ダメなの?」

「いや、いいけどさ・・・」


スイレンは私とは別の世界で生きている。

有名人になり、世の中の女子をキャーキャー言わせる男になっていた。

彼の魅力は“一途なところ”だという。

何でも、心に決めた人がいるとずっと公言しているらしく、思わず応援したくなるというのがファンの気持ちだとか何とか。

へえ、と適当に相槌を打ちながら、頭の片隅で、いつかのスイレンの笑顔を思い出す。

関係があったのは昔のことだし、今の彼が私のことを覚えているかどうかも分からないが、仮に覚えていたとしても一生会うつもりはない。

前世がどうであれ、今は今。

彼は彼だけのために、今の人生を生きるべきだ。


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