第4章 弱いものいじめ。
ようやく私の涙が止まると、イタチがタイミングを見計らったように部屋へ入ってきた。
「イタチ兄さん」
「・・・・ハル。大丈夫か?」
「・・・うん、平気だよ。それより、あの・・・」
「ん?」
「ごめん、なさい。心配かけて、ホントに、」
「謝るな。俺の方こそ、ごめん。すぐ助けに行けなくて」
イタチは私の手を握ってそう言った。
「・・・それで、あの人は・・・」
私の言う”あの人”が誰か察すると、厳しい顔をした後、すぐに優しい顔をして言った。
「・・・あの男は、もう心配ない。もう、ハルの前に現れることはないよ。大丈夫」
(・・・殺した、とか・・・?)
ありえないと思ったが、この世界では何が起こるか分からない。
「そっか」
私はそれ以上聞くことが出来ず、口を閉ざした。
「・・・・イタチ兄さん、重くない?」
「大丈夫だ。あ、寒いか?」
「ううん。イタチ兄さんにおんぶされるのはいつぶりだろ」
「・・・そうだなあ、随分と長いことしてないな」
今は、夜。
あれから、イタチと話し合って結局元居た家に帰ることにした。
帰りは私に道が分かるはずもないので、イタチがおんぶしてくれることになった。
まあ、その前に「一人で帰れる」と言いかけた時には「何言ってんだお前」みたいな視線を投げられたので、おとなしくイタチに従うことにした。
「じゃあ、行くぞ」
「おー!しゅっぱーつ!」
先ほどまでのしんみりした空気を払おうと明るく言うと、イタチは少しだけ微笑んで「コラ、あんまりはしゃぐと落ちるぞ」と私を小突いた。
家に着き下に降ろしてもらう、家の中の惨状は思っていたよりもすさまじいものだった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
電気をつけたまま、固まる。
「・・・どうしよ?」
イタチを見上げると、イタチは私を抱っこすると家の中に入った。
そのままベッドに座らされる。
「俺がとりあえず適当に片付けとくから、ハルはそこに座ってろ」
そう言い、イタチは腕まくりをするとせっせと片付け始めた。