第46章 幸せ者
「別にあなたを否定してるわけじゃない。でも、あなたは何でも一人でやろうとするから、あなたが気付かない内に、あなたがどんどんボロボロになっていく・・・」
「違う、私はそんな」
「違わない。・・・私は・・・見ていたわ。・・・みんなが死んでいく度に、死んでいくあなたの心を」
小南の声が震えたのがわかった。
「ごめんね」と彼女が掠れた声で言った。
何に対する謝罪なのかわからなかったけれど、私は彼女に謝ってほしいわけじゃなかった。
「ごめんね、って・・・何が?ねえ・・・そんなこと言うくらいなら、最初から死なないでよ・・・」
「ハル、」
「私は、小南ちゃんの命の上には生きたくなかった」
みんなが残してくれたのは幸せな思い出だけ。
けれども全部自分が招いたことであって、何もしなかった自分が悪いことは明白だ。
それを今さら嘆くなんて、バカじゃないの。
でも、私の望む世界には、みんなの存在が必要不可欠だったのだ。
「ねえ・・・小南ちゃんは私のために無駄死にしたんだよ。だってほら、私は今にも死にそうだし・・・意味なかったんだよ」
「・・・私は後悔していない」
「・・・」
「あなたがここで息絶えようとも、あの時の私の行動は間違っていたとは思わない。・・・あなたがあの時の私を否定しようとも、私は私のためにあなたを生かしたかった」
「なんで・・・?」
「あなたが生きているということが、私たちの望みだから」
視線を上げると、小南の紫がかった目に私の悔しそうな表情が映っているのが見えた。
言い切った彼女の口元には笑みが浮かんでいた。
鼻がツンとして、視界がぼやける。
それが頬を伝ったとき、ポン、と私の頭の上に手が乗っけられた。
「ブッサイクなツラだな」
「サソリ・・・」
「情けねえ・・・オレのコレクションをやったっていうのに」
「いらないよ・・・一番最初に死んだくせに」
「あ?」
「傀儡・・・サソリみたいにうまく使えないよ、私」
「そりゃそうだ。お前は最初っから下手くそだったからな」
「・・・」
「お前が使おうが使ってなかろうがどっちだっていい。オレがお前にやりたかったんだ。・・・まあ、一生分の誕生日プレゼントって思っとけ」
しゃがみこんだ彼と目を合わせたのが最後、私の涙はさらに流れ始めた。