第46章 幸せ者
「待っ・・・」
「て」を言い終える前に、三代目は私の前から横に移動した。
そこで私は必然的に全員の視線を一気に受けることになり、恨めしげに三代目を見た。
私が無言でいると、最初に名前を呼んだのは小南だった。
「・・・ハル?」
戸惑いを隠せない様子のみんなを背中に、彼女が近づいてくる。
「・・・めて・・・」
「・・・?」
「・・・やめて・・・来ないで・・・」
私の声は聞こえているだろうが、彼女はおかまいなしにスタスタと歩いて私の目の前に座った。
「・・・来ないでって言った・・・」
「そうね」
「なんで・・・」
話す度、ズキズキと腹が痛む。
(ああ、サスケ兄さん早く・・・お願い、戻ってきて・・・スイレンがくれた時間が終わってしまう)
焦りと不安で待つことしかできない自分を叱咤したくなった。
するとそんな私の頬に、彼女の手がのびた。
「・・・冷たいわね」
「さわらないで・・・汚れる」
「どうして?」
「手に・・・血がついてしまう」
私がそう言うと、彼女は少し黙ると力の入っていない私の手をとった。
「ねえ、話聞い・・・」
「・・・ボロボロね」
「・・・」
「痛いとか・・・助けてとは言わないのね、あなた。私が今まで殺してきた忍の方がよっぽど命乞いをしてたわ」
「・・・小南ちゃんは、そんなこと言う人じゃなかった」
「そうね、私はあなたの前では何者でもない一人の人間だったから・・・あなたと話してると、自分が一般人だと錯覚してしまいそうになることもあったわ」
「・・・」
「あなたは確かに、私たちの光だった。あなたがいてくれたから、私たちは報われた気がするの。それがたとえ不確実なものでも、私たちはあなたに救われた」
「・・・急に、なに・・・私が死ぬからってそんなこと言わないで」
「死に際に人間の本性が現れるとどこかで聞いたことがあるの」
「・・・」
「あなたの本当の姿はそれだったのね」
「何それ・・・私が、いつだってボロボロだったって言いたいの?」
どうして私はこんなにイラついてるんだ?
こんな時にする行動じゃない。
それでも、私は取り繕う気もなかった。