第46章 幸せ者
「余計に泣かせてんじゃん、旦那」
「うるせえ」
「なあハル、お前オイラの最期の芸術見てくれたか?」
「え・・・?」
「お前、あそこにいただろ?うん・・・絶対そうだ」
「気づいてたの・・・?」
「お前にはとっておきの芸術を見せたかったんだ!どうだった?感想を教えてくれ!」
「バッカ、お前何言ってんだよ・・・話聞いとけクソ野郎」
デイダラが無邪気な笑みを浮かべて私の感想を求めている。
「・・・きれいだったよ」
その声は震えていた。
「本当か!」
「・・・うん、ほんとう。私がいままで見たなかで、いちばん・・・きれいだった」
「良かった!オイラ、まだまだお前に教えてない芸術がたくさんあったんだけど、死んじまったからなあ・・・お前に何か残せてよかったぜ、うん」
デイダラはバカでアホだ。
でも、もともとデイダラはこういう人だった。
懐かしくて、私は小さく笑った。
「ほら、オイラは旦那と違って笑わせたぜ、うん!」
「デイダラ、邪魔だ退け」
「あ!?・・・いってーな、何でお前はいつもオレへの扱いがひどいんだよ、角都!」
「ハル、オレは別にお前にどうこう言うつもりはない」
「聞けよ!」
「・・・お前に術を教えるのも、あの暮らしも悪くなかった」
「角都さん・・・」
「んだよ、照れ屋だなあ、角都は。ハル、お前のおかげでオレはよく笑ったよ。ま、角都と同じってことだな。・・・みんな、お前のこと好いてるってことだ」
「ちょっと飛段、私が話す番だったでしょう?空気読んでください。・・・リーダー、何休憩してるんです?きちっとしてください」
飛段が口角を上げたまま言う。
こんな表情もしていたなあと思い出す。
すると、小さくため息をついた鬼鮫がどこかへ歩いていく。
そして戻ってきたときには、イタチを連れていた。
「・・・あなたともあろう人が何ボーッとしているんです?私の知っているあなたは常に堂々としていましたけど」
「・・・鬼鮫、オレは」
「話すのは私ではなく、彼女に」
そこでやっと、目が合う。
血だらけの私がその目に映るのが嫌で、私は無意味に目をそらした。