第45章 わたしと私
パチン、と乾いた音がその場に響いた。
スイレンがひどく驚いた表情で私を見た。
「は、はあ?何言ってんの?・・・私と一緒に死ぬ?・・・何ソレ・・・勝手に決めないでよ・・・!」
震える手を、私は握りしめた。
「わ・・・私はっ・・・いや、絶対にいやだ・・・っ」
『えっ・・・』
「やだ・・・いやなの、」
『・・・』
「いやだ・・・いやだ・・・!」
スイレンの前から数歩後ろに下がり、何かに触れないと不安で仕方なくて、自分をきつく抱きしめた。
訳も分からず、ポロポロと涙がこぼれた。
「私のせいで、アンタだけは死なせたくなかった・・・絶対、死なせたくなかったのに・・・!」
『ハル・・・』
「私は・・・アンタが私を想ってくれてるように、スイレンが大好きで、大切だから・・・死んでほしくないの!だからこそ、いっしょに死にたくない・・・!」
ずっといっしょにいた。
木ノ葉を出てから、ずっと二人でいっしょにいた。
いろんなところに行ったし、危ないこともたくさんした。
怪我をしたらスイレンが治してくれて、私はたくさん「ありがとう」を言った。
楽しいときはいっしょに笑い合ったし、みんなが死んでしまったときは、黙って傍にいてくれた。
苦しいときも、悲しいときも、
楽しいときも、嬉しいときも、
私たちはずっと、ずっといっしょにいたんだ。
「死ぬのはいや・・・アンタと一緒なら尚更、いやよ・・・」
スイレンがいてくれるなら、私は何も怖くないと思う。
暗いところだって手を繋いで行けるなら、何も怖くない。
でも、私がここでスイレンを巻き添えにしてしまうのは、きっと間違っている。
「・・・どうにかしてよ・・・アンタならアンタが助かる方法くらい、わかってるでしょ・・・!」
スイレンはきっと、誰よりも優しい。
「スイレンと死ぬくらいなら、そこら辺で見知らぬ人と死んだ方が何百倍もマシよ!」
その優しさに甘えてしまう私が、本当に大嫌いだ。
「ねえ・・・後生だから、私のお願い聞いてよ・・・」
手の震えはいつの間にか止まっていた。
「ねえ・・・お願いだから・・・」
その代わり、私の嗚咽がその場に響いていた。
手で顔を覆い、その場に座り込んだ。