第45章 わたしと私
「スイレン・・・アンタ、死んでしまうかもしれないのに・・・私のことを心配してる場合じゃないでしょ!?」
『ハル、』
「なんで?生きたいって思わないの?私のせいでアンタまで死んでしまうかもしれないのに」
『・・・』
「もっと必死になりなよ!生きたいって思わなきゃいけないんだよ!死にたくないって思わなきゃいけないの!死んだらそこで終わりなんだよ?」
『・・・』
スイレンの腕をつかんだまま、感情のまま強く揺さぶる。
訳も分からない悔しさが胸に広がって、スイレンを見上げる。
「ねえ、何それ・・・」
スイレンは真っ直ぐ私の目を見ていた。
スイレンの顔には、笑みが浮かんでいた。
「なんで・・・そんな・・・顔してるの・・・?」
『ハル』
「ねえ、なんで・・・?こんなときに、笑ってんなよ・・・アンタのそういうとこ、大嫌い・・・」
スイレンのこういうところが大嫌いだ。
たとえ100%私が悪くても、スイレンは私を許してくれる。
私のせいで死ぬことになっても、
きっとスイレンは笑って許すのだろう。
「お・・・お願いだから・・・諦めないで・・・」
「私のために、諦めないで・・・じゃなきゃ、私は・・・こんな時までアンタに甘えてしまうの・・・」
「アンタが諦めたら・・・私は・・・わたしは・・・」
「私が、諦めてしまうじゃない・・・」
本当は、自分が一番よくわかっている。
マダラにやられた傷は自己修復もできていなかったため、致命傷になっているだろう。
残り少なかったチャクラはサスケの傷の修復にあててしまった。
いくらスイレンが仮死状態にしてくれたと言っても、目覚めたら私の命は終わりに近づいていく。
それがわかっているから、もう無理なんだと諦めかけている私がいた。
『ハル、もういいよ。キミも僕も、もう時間なんだ』
「・・・」
『・・・僕はね、キミがいっしょにいてくれるなら怖くないよ。どんな暗い場所でも、キミと手を繋げるなら僕は歩いて行ける』
スイレンの言葉に、胸が痛いほど締め付けられる。
そのとき、私は初めて、自分の意志でスイレンに手を上げた。