第45章 わたしと私
「わたし、そろそろ時間なの」
「・・・は?」
「ほら、少しずつ消えていってるでしょ・・・これでわたしは消えて、あなたは目覚める。大丈夫、わたしが消える前に、あの子に代わってあげるから」
「ちょっと、何言って・・・あの子って誰よ!?アンタ消えるって、そんな・・・!」
そこで彼女の手が透けていることに気づいた。
「あ、え?・・・ちょっと、なんでアンタ透けてるの!?」
「じゃあね。もう二度と会わないけど、それがいいわ。会えて良かった」
彼女がぎこちない笑みで私を見る。
私が何かを言う前に、彼女がギュっと手を握る力を強くしたと思うと、目を閉じた。
そして完全に透明になったと思うと、彼女がいたそこに誰かが現れた。
私と手を繋いだままの状態で、それは目を開けた。
「あ・・・アンタ、」
『ハル、久しぶり』
「なんで・・・スイレン・・・?」
現れたのは、スイレンだった。
『もともと僕は、元の世界のキミなんだ。だからキミの思考も読めるし・・・だからこそ、キミと命も繋いだ』
「は?・・・命?・・・アンタが、前の世界の私?・・・ちょっと待って、意味わかんない・・・」
『だから、今までキミが話してたのは前の世界のキミで、それは僕でもある。・・・まあ、細かいことは置いといて・・・キミ、今の状況わかってる?』
「はあ?・・・戦争中で、私は死んだ・・・でしょ?」
『言うと思ったよ。・・・でも違う、キミはまだ死んでない。僕のチャクラで一旦キミの魂をここに連れて来たんだ。で、今の現実世界のキミの肉体は仮死状態になってるんだけど、あんまり長い時間ここにいるのもよくないからね』
いつもの調子で話し出すスイレンに、私は少したじろいだ。
「・・・スイレン」
『ん?』
「何でそんな平気な顔してんの?」
『え・・・何でって、どういうこと?』
「・・・アンタ、元の世界の私って・・・それに、命を繋いだ・・・?・・・それって、アンタ・・・私と死ぬことになるのよ・・・?」
“命を繋いだ”
それが文字通りなら、私が死ねばスイレンも死ぬことになるし、スイレンが死ねば私が死ぬことになる。
それに、私は今、死にかけている。
仮死状態にしたとスイレンが言っていたが、それもどういうことなのかいまいちわからない。