第45章 わたしと私
背景は真っ白なので、目をこらさなくてもそれがどんなものかはわかった。
それを避ける方法はないかと橋の下をのぞいてみるが、白以外何もなくて、どんな状況かもわからない。
(これじゃあ、私がオビトに操られたときと同じじゃん)
黒くてグチャグチャした人の形をしているものが大勢いて、橋を塞いでいた。
「怖い?」
「・・・別に」
「あんなぐっちゃぐちゃなの、私は怖いよ。だからアンタも怖いよね」
「・・・同じにしないで」
「同じでしょ。私たち、同じ人間なんだから」
話していると、それらがこちらを見た。
やがてぞろぞろと私たちの方に近づいてくる。
「ええ・・・?まあでも大丈夫、少しだけ待っててもらえたら、すぐ通れるようにするから」
「・・・どうするつもり?」
「要するに戦えってことでしょ。行ってくるね」
ゆっくりと彼女の手を離し、それらに近づいていく。
身に着けていた刀を抜き、それらの首を一体ずつ斬っていった。
それらは反応する素振りもみせず、斬られるとすぐに倒れこんでいく。
そして、最後の一体を斬り終えると、彼女の小さな悲鳴が聞こえた。
「いや・・・!来ないでよ!!」
「!」
バッと振り返ると、彼女が何体かの黒いやつらに追いかけられていた。
(斬り残しがあったのか?・・・いや、そんなはず・・・だって、全部斬ったのに、)
すると、今斬ったばかりの周りのものが、次々にゆらりと立ち上がる。
「ねえ、助けて・・・!」
「待って、すぐ行くから!」
(どういうこと・・・!?)
とりあえず、あの子のところに行かなきゃ。
きっと一人じゃどうすることもできない。
「ちょっと、どいてってば・・・!!」
黒いやつらはまったく動こうとしない。
「いいからどけっつってんだろ!!」
通れる隙間はある。
けれども、黒いやつらを避けて行けば彼女の元にたどり着く時間がかかるだろう。
そこで私は、橋の手すりの上にあがり、走り出した。
やっとのことでたどり着くと、彼女の上に詰め寄っていたのは、黒いもの―――ではなく、女性だった。
(この後ろ姿・・・)
見覚えがある。
それは、よく見たことのある、あの人の後ろ姿だった。