第44章 大切なもの
意識を失ったハルの聞いた足音は、カブトのものだった。
カブトは倒れているサスケとハルを見ると、二人の傍に膝をついた。
「おい、お前・・・」
「おや・・・二代目様ではありませんか」
「そんなことはどうでもいい。その兄妹を・・・」
「わかっています」
カブトが手をのばしたのは、サスケだった。
ハルの手をどかし、仰向けにする。
腹の蛇から直接サスケの体へと伸ばし、傷口を修復し始める。
一命は取り留めた、とカブトが判断し、次にハルの状態を見ようと彼女に手をのばす。
けれども、その手が届くことはなく、代わりにカブトにはクナイが向けられていた。
「さわるな」
「ああ・・・キミ、スイレンって言ったっけ?その子が大切なのはわかるけど、今は時間がないんだ。早くしないと彼女、死んでしまうよ?」
「・・・お前に言われなくても、わかってる。でも、まだ僕が動けるってことは、大丈夫ってことだから。・・・それよりお前、敵じゃないの」
「まあね。いろいろあって、改心したんだ」
突如現れたスイレンはそれを聞き、一瞬鋭い眼光をカブトに向けたあと、ハルへと視線をずらした。
そこへ大蛇丸一行が到着し、カブトが事情を説明していると、スイレンはその間に彼女を仰向けにし、手を握った。
「・・・」
血だらけの彼女の手は冷たかった。
「・・・ハル、何でかなあ、こんなことしちゃうの・・・」
スイレンが苦笑する。
「ダメだよ、ハル。まだ眠ったらダメ・・・せめてこの戦争が終わるまでは、起きていよう?」
「おい・・・お前、どうするつもりだ?」
「一旦、眠る。起きるまで、サスケのことは頼んだよ」
やがてスイレンが手を握ると、そのまま隣に横になる。
スイレンはハルの顔を見たあと、握った手を離さないよう少しだけ力をこめ、目を閉じた。