第44章 大切なもの
私が突進したことで弾き飛ばされたサスケは、下に落ちるとすぐにこちらを見た。
「ハル!!」
私の心臓には刀が刺さっていた。
鋭い痛みが体を突き抜け、息をするのも痛いほどだった。
「そう何度も己の身を犠牲にしては・・・いずれ死ぬぞ、ハル」
「っるさい・・・」
「ずいぶんと反抗的だな。・・・だがまあいい、それもまた一興。従順だけではつまらん」
マダラがぐっと刀を奥へ押す。
「あ゛・・・ッ・・・!!」
「戦争が始まる前、お前が持っていたのは“悲しみ”・・・オレに操られていたときは“憎しみ”・・・そして今・・・お前は何を持っている?」
「・・・」
「お前が自我を取り戻せているのは、術者たるオビトが死にかけているからだが・・・オビトといいお前といい、幸せな世界を見るのがそんなに嫌なのか?」
マダラが私から刀を抜く。
それと同時に私の体が下へと落ちた。
「ぐっ・・・」
マダラが刀を下に刺し、うめき声を上げる私を見ていた。
「・・・あ、なたには・・・感謝している・・・」
「ほう」
「夢を・・・幸せな夢を見せてもらえた・・・あたたかくて・・・でも、冷たかった・・・」
「・・・」
「・・・夢は、夢だから・・・嬉しかったけど、むなしかった・・・だから、私は・・・いらないの、偽物は・・・嘘なら、嘘でいい・・・でも、嘘が本当になるのは、嫌だ・・・」
息絶え絶えになりながらも、私はそう言った。
(自己修復が・・・時間が掛かりすぎてる、このままじゃあ、出血多量で・・・)
「お前の答えはわかった。だが、お前が今庇ったところで、それはその場しのぎにしかすぎん。・・・お前がそうやって倒れている間に、オレはお前の兄を殺す」
「ッ・・・!」
サスケが手裏剣をマダラの死角から投げるが、マダラは刀で弾いた。
そしてその直後、マダラがサスケの方に刀を投げると同時に、私は今あるすべてのチャクラを瞬身に使った。
(もう死んでもいい)
(サスケを守れるなら、ここで死んでしまっても構わない)
(だから)
一足早くサスケの前に出る。
(よかった)
そう思った直後に、再び、刀が私の体を貫いた。
「ッふ・・・」
しかし、私の体だけでは刀を受け止めきれず、後ろのサスケにも刃が届いてしまった。