第44章 大切なもの
「うわっ・・・ちょっと・・・」
『・・・た・・・よかった・・・!』
スイレンが力強く私を抱きしめる。
私の耳元ですすり泣きが聞こえた。
「・・・泣いてるの?」
『うん・・・』
「・・・なんで私、まだ生きてるの」
『・・・』
「約束、守ってくれなかったのね」
『・・・ごめん』
「いいわよ、もう。・・・私も、アンタにこんなこと頼んで悪かったわ」
『・・・ホント、だよ・・・ばかぁ・・・』
スイレンから体を離し、顔を上げる。
「ごめんね。でも、クナイ刺したのアンタでしょ」
『うん・・・キミが僕の名前を呼んだから、びっくりしたら手が滑って。ごめん』
「まったくよ、もう。でも、殴っちゃったし、これでチャラね」
スイレンの頭を撫でる。
久しぶりな感じがして、それが一層私に現実味を与えた。
「・・・私、何した?」
『・・・キミは、マダラに操られてて・・・みんなを・・・』
「・・・そう。まあ・・・予想はできてたけど。・・・じゃあ、贖罪のためにも、はやく戦争を終わらせなくちゃね」
『キミは悪くない!・・・仕方なかったんだ』
「仕方なくはないわ。これは私の弱さが招いたことだし、私が殺した人たちに言い訳はできない。・・・それに、こんなことをして、みんなに顔向けできないよ」
(って、今はこんなことしてる場合じゃない)
「ちょっと、微妙に現状把握できてないんだけど」
『・・・あのね、戦争中だよ』
「見たらわかるって、そんなこと。・・・で?マダラはどこ?」
『・・・あそこ』
「オビトは?カカシは?」
『向こう。いっしょにいる』
「サスケ兄さんとナルトは?」
『あっちとあっち。サスケがナルトのところに向かってる・・・あ、そこにマダラと柱間も』
とりあえずスイレンに今いる場所を教えてもらうと、まずはサスケとナルトのところに行くことにした。
「行く前に・・・スイレン、言ってなかったことがあるから、聞いてくれる?」
『・・・?』
「ありがとう。・・・きっと、聞こえたのは、アンタの声ね」
スイレンは眉を下げて笑うと、つられて私も小さく笑った。