第43章 対峙
「嘘つくなってばよ」
「嘘なんかついてない」
「お前はそんなこと言うヤツじゃねーだろ」
ナルトがそう言うと、彼女は怒ったような、悲しいような表情をして、少しきつい口調で口を開いた。
「じゃあどうするの?全部を助けることはできないんだよ!そんなことわかってるでしょ!?これ以上言わせないでよ!早く私を―――」
「クロ」
「っ・・・」
彼女が言いかけた言葉を遮るように、ナルトは彼女を優しく抱きしめた。
「お前は、一人ぼっちだったオレを救ってくれた。だから今度はオレの番だ」
「っ無理よ・・・」
「やってみなきゃわかんねーだろ。・・・人には諦めるなっていうくせに、自分は簡単に諦めちまう。それがお前の悪いところだ」
きっぱりと言い切ったナルトの腕の中で、彼女は肩を震わせていた。
「・・・ほんっと、バカだよ・・・」
「そうかもな。でも、オレってばお前のこと大好きだから、しょうがねーよ」
「ハハッ、何ソレ・・・。お願いだから、早くしてよ。サスケ兄さんには、見られたくない」
「そうだな、アイツにいいところ取られたくないし、頑張るってばよ。でも大丈夫、絶対に助けるから。約束だ」
そして、再び戦場へと意識が引き戻される。
振り上げた刀が貫いたのは、ナルトではなく。
「・・・?」
彼女自身だった。
自分自身に刺さっている刀と自らの手を見て、彼女が不思議そうな表情をした。
口の端から垂れた血を拭い、彼女が刀を抜く。
その隙にナルトが素早く移動した。
「お前、なんで・・・」
その言葉に反応はなく、彼女は再びオビトとマダラの元に戻った。
一瞬、スゥッと彼女の頬にある模様が薄くなりかけたが、オビトが印を結んだことで、元通りになる。
その直後、地面が大きく揺れ、十尾の雄叫びが戦場に響いた。
「火遁・豪火滅却!」
「火遁・爆風乱舞!」
「火遁・豪火滅失!」
三人が印を結び、火をまき散らす。
だが、戦場の全員に渡っていたナルトのチャクラが守り、誰も傷つかなかったが、ナルトに大きな疲労を与えた。
十尾が大きく口を開け、尾獣玉が形成され始めていた頃には、ナルトの九尾モードは解け、渡していたチャクラも消えていた。