第43章 対峙
ナルトの見た先に、ハルの姿があった。
今は敵で、操られてしまっている―――そんなことはわかっていても、言わずにはいられなかった。
「・・・おい、クロ・・・お前、仲間が殺されても、何でそんな平気なツラできるんだよ!?いい加減目覚ませ!!」
そう叫んでもハルは全く反応せず、そのあと姿を消しただけだった。
―――次の瞬間、
「!!」
ナルトの前に、ハルがいた。
大きく刀を振りかぶった彼女の目に、ナルトが映る。
そして―――気づけば、二人だけの空間にいた。
「クロ・・・あ、いや、本当の名前はハルっていうんだよな。どっちで呼べばいい?」
「・・・どっちでもいいよ」
「! ・・・お前、元に戻ったのか・・・?」
ナルトの前に立つ彼女は、ナルトが知っているへらっとした笑みを浮かべていた。
「ううん、残念ながら。私は、今の“わたし”の中に残ってた人格かな」
「・・・そっか」
「キミがどういうつもりで私を呼び続けているのか知らないけど、そろそろ終わりにした方がいいよ。・・・見てよ、今の状況。私は敵で、殺さなきゃいけないんだよ。ここで情けをかけるのは間違ってる」
「クロ、」
「私は、キミがきらいで、みんなを殺したキミが憎いのかもしれない。・・・でも、今はそんなことはどうでもいいの。早く私を殺さなきゃ、他の人がどんどん死んでいくだけだよ」
「・・・本当に、お前を殺すしかないのか?」
「自己修復がある限り死にはしないと思うから、動けなくするか、封印するっていう手もあるかもね」
「オレはお前がいなくなるのは嫌だってばよ」
ナルトがそう言うと、彼女は「ありがとう」と眉を下げ、くしゃくしゃな笑顔を見せた。
(そんな顔は、初めて見た)
「でも、守るものの順番を間違えちゃだめだよ」
「順番とかそんなのつけられねーだろ。お前もみんなも、大切で、守りてえんだ」
「じゃあ選んでよ」
「・・・!」
「私か、みんなか。私一人のために、ナルトくんはみんなを殺すの?・・・順番をつけて、ちゃんと正しい方を選ばなきゃいけないときだってあるんだよ」
彼女は、いつの間にかナルトがよく知っている“クロ”の顔をしていた。
「私は死にたいの。だから、どうなってもいいんだよ」