第43章 対峙
ポカンとしているスイレンを見て、ハルは一瞬で姿を消した。
「あ・・・どこ行った・・・?」
バッと振り返り、ハルを探す。
すると瞬きの間に、ハルが目の前に迫っていた。
「・・・!」
一瞬、反応するのが遅れて、ハルの刀が胸に刺さる。
スイレンは苦しげな表情をするわけでもなく、驚いたような、悲しげな表情をして―――
「邪魔だ」
吐き捨てるように言って去って行った彼女を、引き留めることもせず、しばらくその場にうずくまっていた。
―――そして、戦力をどんどん削っていくハルの動きが大人しくなったのは、マダラに名を呼ばれてからだった。
「戻ったか、ハル。・・・フッ、お前を手中に収めるというのはこんなにも愉快だとはな。反抗的だったその目も、今は光を失くし、従順そのものだ」
「・・・」
「相変わらず話さんか。・・・ま、いいだろう」
「おいマダラ、ハルを気に入っているのはわかったから、よそ見していると足元をすくわれるかもしれないぞ」
「オレが?言うようになったな、オビト」
「フン」
戦場は、血にまみれていた。
先ほどのオビトとマダラが仕掛けた攻撃で、ナルトを守ろうとしたヒナタを庇ったネジが倒れた。
「ッネジ・・!」
「どうした?仲間は誰ひとり死なせないんじゃなかったのか?」
「ッ・・・」
「ナルト、お前はオレによく似ている」
(オレのせいで・・・オレは、誰も守れない、救えない・・・?)
下を向いたナルトだったが、ヒナタが強引に、涙をいっぱいにためた目で、ナルトを自分の方に向けた。
「―――しっかりして、ナルトくん」
「・・・ヒ、ナタ」
自然と視線が上にあがり、ナルトの目に再び光が宿る。
ヒナタの手が、あたたかく感じた。
赤くなった目が、力強く感じた。
アイツとはまた違った強さ。
「・・・偽物なんていらねえ。オレは本物のネジをここに置いておきてえんだ」