第42章 開戦
―――激戦の末、カブトに“イザナミ”をかけることに成功したイタチは、穢土転生を解く前にハルの元へ足を向けた。
ハルの体を起こし、岩壁にもたれかけさせる。
サスケが何回か彼女の身体を揺さぶると、彼女の目が薄く開いた。
「ハル、オレがわかるか?」
イタチが呼びかける。
「・・・ダメか。どうすれば元に戻ってくれるんだろうな」
「マダラを殺すしかないんじゃないか?・・・このまま穢土転生を解除してしまえば、アンタは消えてしまうんだろ?どうにかしてアンタだけこの世にとどまることはできないのか?」
「それはできない」
「・・・アンタがいないのに、どうするっていうんだ」
サスケが低めの声で呟くと、イタチは苦笑しながらハルの頭を数回撫でた。
「お前ならできるよ。・・・オレとお前がこうして話をしているのを見たら、きっとハルは喜ぶんだろうけどな」
すると突然、ピク、とハルが体を揺らした。
「! ・・・ハル?」
「ん・・・ん、ん?」
先ほどまでの虚ろな目とは違う。
その目はしっかりと兄たちを捉えていた。
「イタチ兄さん・・・サスケ兄さん?え、どうしたの・・・?」
「目が覚めたのか!」
ハルはキョロキョロと辺りを見渡すと、突っ立ったままのカブトを見て、何か納得したように自分の頬に手を当てた。
「もしかして私・・・何かした?」
「お前が気にすることはない。それより無事か?」
「え、ああ・・・私、本体じゃないし」
「分身か?」
「うん。あのさ・・・私の頭撫でた?」
「ああ」
「それかあ。たぶん懐かしい感触だったから、目が覚めたんだね。・・・ねえ、イタチ兄さん、サスケ兄さん、意識があるうちに言っておくからよく聞いてね」
「イタチ兄さん」「サスケ兄さん」と呼ばれることが懐かしくて、嬉しい。
そんな心中を知ってか知らずか、ハルはニコニコと笑ったまま、二人に向かって言った。