第42章 開戦
―――何故だ。
どうしてこうなるんだ?
どうして兄妹で戦わなきゃならない?
おかしいだろ。
真実はもうわかったのに。戦う必要なんてないのに。
―――どうしてハルは、こんな目に遭わなきゃいけないんだ?
「平気なわけないだろう。でも、今自分ができることは何かよく考えろ。・・・ハルは致命傷を外して動けないようにしておけ。あとでハルに掛けてある術を解く方法を探そう」
「・・・わかった」
サスケは悔しげな表情のまま、刀を抜いた。
「オレはアイツをやる。お前はハルを頼んだぞ」
「ああ」
(少し痛いだけだから、我慢してくれ。必ず元に戻してやるから)
サスケは生まれて初めて、戦いたくない相手と戦った。
殺さないように、細心の注意を払って。
でも、ためらいをはらんだ刃でハルを斬っても、彼女の身体にダメージを受けたようには見えなかった。
そしてそれは推測から確信へと変わる。
「どういうことだ・・・傷が、治っていく・・・?」
これをどこかで見たことがある。
(ああ、そうだ。クロもたしか・・・アイツは自己修復とか呼んでいたな・・・)
アイツの治癒能力を見ているようだ。
カブトに何か体をいじられてしまったのか?
「そんなことより、これじゃあ埒が明かねえ・・・!」
傷一つ付けられないのに、どうやって動けなくするんだ?
そんなサスケに、ある考えが浮かんだ。
「おい!」
ハルにぐっと距離を詰め、振り向いたところで刀を下から上に向かって動かすと、後ろに下がったハルの額から頬にかけて、右上がりに傷ができていた。
傷が塞がり始めたと同時に、目元を覆っていた包帯が地面に落ちる。
「!?」
ハルのこめかみから頬にかけての部分には何か模様があった。
一瞬息をのんだが、ためらいを振り切って、ハルに幻術をかける。
ハルはその瞬間、意識を無くし、地面へ倒れこんだ。
複雑な心境のまま倒れたハルを見ていると、後ろから声が掛かった。
「あーあ・・・幻術かけられちゃったか。ボクはこの子のすべてを支配してるわけじゃないから、ちょっと失敗だったかな・・・でもサスケ君、さすがに妹は殺せないんだ?」
「黙れ。今すぐお前の首飛ばしてやるよ」
「相変わらずだね、その生意気癖。まあでも・・・キミにできるかな?」